京都大学理学研究科の黒田 純平先生に「魚のヒレに潜むコラーゲンと細胞達の話」と題して分かりやすくお話をして頂きました。蛍光標識技術のおかげで、ゼブラフィッシュのヒレの生きたままで巨大なコラーゲン分子、アクチノトリキアとそれを取り巻く細胞の動きを観察することができました。ミクロの世界をきれいな映像で楽しむことができましたね。各細胞が自分の取るべき動作をわきまえていて、組織全体が構成されていく仕組みは見事です。また、同じ仕組みが別の生物とも共通点があるらしい。どんどん、その興味の深みに入り込んで行きそうです。
(研究テーマ)動物の器官、特に移動に関わる手足やヒレ、羽などの外部器官には、大きな剛性としなやかな動きが必要とされる。これらの器官を作っているのは、やわらかな細胞と、コラーゲン・ケラチンなどの細胞外のタンパク質、およびハイドロキシアパタイトで構成される硬組織であり、細胞は、これらの素材を適切な配置に組み立てることで、機能的な外部運動器官を作り上げる。それでは、どのようにして小さな細胞は自身のスケールをはるかに超える構造を正確に構築することができるのだろうか?
本文京都大学理学研究科 研究員遠藤淳先生にカメムシの一斉に孵化する謎についてお話しいただきました。昆虫博士のファーブルが見つけたそうですが、孵化前のカメムシの頭部分にある三角帽子の尖ったところで、卵の殻を割る動作をするそうです。今回は、その続編で割る振動で、隣接する卵に伝達し、一斉に孵化する現象となるそうです。なぜ、一斉に孵化するのか、それは、共食いにされたくないことらしいです。ただし、一斉に孵化を起こさないカメムシの種類もいるとは、奥が深い。カメムシの世界は、そんな単純ではないようです。カメムシのあの悪臭?は、トランス2ヘキサナールという物質とのことですが、パクチーの好きなあなたは、好きなにおいではないですか。
京都大学大学院理学研究科 准教授船山典子先生にカワカイメンの構造形成の仕組みについてお話しいただきました。最初に細長い骨片(150~200μ)を作り、その真ん中を担ぎ、所定の場所まで運ぶ。外膜に突き刺して、立ち起こし、礎を作り固定する。さらに、別の骨片をその上につなぎ、高いテントを張る。このような建築工法は、人と同じ仕組みですね。この解明を、顕微鏡、蛍光画像技術、遺伝子技術などで行い、解説していただきました。ニコンの植田さんに協力していただき、教室に持ち込んでいただき、素晴らしい画像を見せて頂きました。
それにしても、生物の設計図のない世界(各部分が自律で判断 ローカルルール)の不思議さは、ず~と奥が深いですね。
工樂先生に遺伝子配列と進化の関係をわかりやすく説明していただきました。ヒトゲノムの遺伝子配列が分かれば、すぐにでも、病気の治療や生物の進化が理解できるように思ったのは大きな間違いでしたね。遺伝子の数からは、決して人が、一番、進化を遂げているとは言えないですね。タンパクを作るのにつかわれている遺伝子は、10%くらいで、他は、RNAの状態で使われたり、まだまだ、機能が知られていない分子がたくさんあります。これから、人工知能やビックデータ解析などと連携して、一歩づつ、解明されていくでしょう。
小柳先生の眼の光受容体と ハエトリグモの話 、 十分お楽しみいただけましたでしょうか。小柳先生には、今回、一般人にわかるようにスライドを新たに作成し、 苦労してハエトリグモを捕まえてお持ちいただきました。 映画の世界でしか、お目にかかれない暗視野用の眼鏡もご持参頂き、大変、ワクワクしました。ハエトリグモが餌との距離感を間違えてしまう映像は、サイエンスの妙味で、見事な検証でした。あらためて、この地球上には、人の知らない生物が、知らない機能で、生きていることを再発見することができました。
ナノバイオの世界、いかがでしたでしょうか。CG動画の映像は素晴らしいです。
微生物の世界、ブラウン運動も使って、省エネで、鞭毛モーターを動かしているのですね。
サルモネラ菌が腸管に侵入するニードル複合体の仕組みと鞭毛モーターが共通する仕組みを持っているのは、驚きでした。クライオ電子顕微鏡(CryoEM)による巨大分子の原子構造の決定で今年2017年ノーベル賞受賞されたリチャード・ヘンダーソン教授もこの研究に貢献しているのですね。
これからこの世界は、社会のいろんな分野で利用されるようになると期待されます。
川村 晃久 先生のお話いかがでしたでしょうか。多くの画像、動画そして細胞標本と準備していただき、万能細胞の研究を間近に見ることができました。プラナリアの再生能力からキメラ動物、もう間近まで、進んでいるのですが、現実には、いろんな障壁(細胞の選別や不均一性)があること、そして、がん治療から人工臓器まで多くの期待があり、楽しみな研究であることがわかりました。話の中にありましたゲノム編集技術(CRISPR-Cas9)は、今、世界で注目されている技術です。この技術にもiPS細胞技術とともに注目です。
小池千恵子先生の錯視の話、いかがでしたか。専門の回路が出てきて、少し難しかったようですね。何しろ、目では見えない脳神経の回路のオン・オフですから。でも、脊椎動物と無脊椎動物の視神経細胞が、脳(中枢神経系)と(皮膚)抹消神経系と成り立ちがまったく違うとは、驚きでした。頬に視線を感じるのは、それと関係するのでしょうか。イカやタコには、盲点がないのですね。また、鳥類は、赤、緑、青色の波長のほかに、紫外線の波長も感知するのですね。人より鋭い! 錯視の原理は、形を認識する経路と動きを認識する経路の時間差だったのですね。いろんなことを教えていただきました。生物は奥が深いですね。
小早川 高 先生のトムとジュリーの話、いかがでしたか 匂いと脳の関係、先天的な恐怖を感じる部位と後天的な部位がしっかり分かれているのですね。恐怖では、実際に体温が下がっているのですね。まさに、背筋が凍りつく。マウスでの育児放棄や害獣駆除にも密接に関連しており、新しいビジネスの取り組みも興味深かったですね。さらに介護問題や認知症への展開もフロアから話題提供されました。こうした地道な基礎研究から応用へ展開するのは、楽しみです。
木津川先生の脳と運動のお話いかがでしたか。物が見えるのは、モノが振動しているから、と聞いたことがあります。今回のお話で、脳細胞も、それぞれが、さまざまな波動の断片で、認知し、統合されて、画像のイメージが出来上がっていくのですね。両手の人差し指の平行に連動した動きが、速くなると、対峙する動きに変わるの、びっくりでした。「慌てると、階段を踏み外しますよ」いい教訓です。フロアからの、認知症患者の現在地の確認に応用はできないでしょうか、の提案は、新鮮でしたね。
丹羽 節先生には、実際に、ガイガーカウンターをお持ちいただき、身近な通常の物にも、放射線が出ていることを実測させていただきました。PETの開発には、医療関係者だけでなく、いろんな技術者、研究者が結束して、成果を出していることも知ることができました。
画像イメージングの進歩は、素晴らしいですね。生体内の個人の立体構造を、手に取るように見せてくれます。科学技術の進展に、今後も期待していきたいと思います。
野村 真 先生(京都府立医科大学・神経発生生物学 准教授)に脳の構造の話をしていただきました。冒頭からいろんな動物の頭骸骨の標品が出てきて、びっくりでした。龍の頭蓋骨は、余興でしたね。哺乳類の大脳皮質が6層の層構造を発達しており、ヤモリも同様のようtとのことです。ほとんど、同じような機能も持っているのに随分違った進化をしてきたものです。でも、それは、人類が、優位で優れているのではなくて、それぞれが、その置かれた環境で、一番生存に優位に進化してきたことに過ぎないようです。そして、スエーデンでの日常生活や教育方針は、参考になりました。